ストレスと免疫
- 2020.04.6 | 代表ブログ
ストレスと免疫
ストレスの生理学的な評価法の一つとして、いわゆるストレスホルモンとして知られているコルチゾールがある。コルチゾールは副腎皮質から放出されるステロイドホルモンであり、ストレスとの関連では最もよく研究されている。たとえば、人前でスピーチをさせるなどの緊張を与えると、その数値は10分ぐらいの間に2–3倍に増加することが知られている。また、コルチゾールは免疫系、中枢神経系、代謝系などに対して様々な影響を与える。たとえば、長期にわたって過剰に分泌されると脳の海馬を委縮させることや、炎症のコントロールを悪くすること、また、うつ病の患者ではコルチゾールが高いことも報告されている。つまり、コルチゾールはストレスと身体的・精神的健康を結びつける重要なホルモンといえる。
このコルチゾールの変化は、免疫システムの働きを抑え込む働きがある。強いストレスが持続すれば、免疫システムが弱まった状態が続くことになりかねない。
ストレスがあると損傷の治癒に時間がかかり、ワクチンに対する反応が鈍くなることがこれまでの研究により知られている。仕事による疲労、対人関係、家族問題、閉塞感などあらゆる種類のストレッサー(刺激)が免疫反応の低下と関連付けられている。たとえば、マウスを拘束した場合、免疫システムは劇的に変化する。ストレス下のマウスにインフルエンザウイルスを接種(体内に移植)すると、免疫反応は遅れて発動、感染した肺は免疫細胞の数が減少する。ところが、同じ条件下でもコルチゾールの作用を抑える(薬物で)と免疫システムは正常に反応する。これは、ストレスが免疫にダメージを与えることを示す確かなエビデンスである(nature.2005)。人の場合も同じことが起きる。認知症の世話でストレスを感じている人のインフルエンザワクチンに関する反応が低下している(lancet.1999)。
世界は、コロナウイルスの脅威にさらされている。ウイルスの拡散を防ぐには人の密集を避けることが効果的だ。しかし、そのために、外出を自粛しなければならず、その結果、強いストレスを負うことになっていることに対して、具体的なストレス対策が急務であることは明白である。