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ストレスケアの定義・対象・訓練法

ストレスケアの定義

ストレスケアの定義は「自己実現を目指すために、ストレス因子である心理社会的問題をどう考えどう乗り越えるかを自分自身で開始し、遂行する諸活動の実践」です。さらに、「ストレスケア社会」の中心概念は、個人と社会が幸福や健康の決定要素をコントロールすることによってニーズを満たし、環境(体験)に対応することによって、幸福や健康の改善を可能にするプロセスです。したがって、ストレスケア社会の発展は、「すべての人があらゆる生活の場で幸福や健康を享受することのできる社会」の実現を果たしていくことになります。また、ストレスケアにおける「健康」は生きる目的ではなく、日々の生活を「幸福に送る」ための自己実現的資源であり、ストレスのリスク因子を回避する社会的資源であることを強調した積極的な概念になります。

 

ストレスケアカウンセリングの対象

ストレスケアでは、家族問題、嫁姑問題、夫婦問題、親子関係、職場の人間関係、育児問題、仕事、人生観の問題など、多様化したそれぞれ独立した問題を扱うことになります。親子関係などある問題に特化してストレスケアを行うということはありません。それは、ストレスケアは、どのような問題であれ、その人にかかっている無理なストレスを解除するというスタート地点は同じであるからです。その意味でストレスケアカウンセリングは、広範囲な問題に関与することが可能になります。

また、ストレスケアの援助の対象となるのは、健常者で、社会的に常識がありカウンセラーとの交流がスムーズにできる人、日常生活からこぼれていない段階の人です。例えば、健康を害して医療機関で治療を受ける必要がある人の場合には、治療が優先されるべきであって、医師の判断でカウンセリングが妥当と判断した場合に限り、ストレスケアによる援助が出来るものとしています。ストレスケアカウンセリングの対象を一言で言えば、自分の人生をこれから良くしていこうと考えている人であり、別の意味で言えば、積極的に生きることを選択している人です。

カウンセリングの対象について次に要約します。

  1. 心理的な不適応が問題の中心にある行動障害、あるいは不安や心配、脅迫などの心の問題やそれによってもたらされる身体的問題。
  2. 問題や症状の原因、体質、性質、素質的身体的な要因が関係しているとしてもその問題の発生や経過に心理的要因が密接に関係している場合。
  3. いわゆる筋バランスの崩れからきていると考えられる心身的なもの。

 

 

ストレスケアカウンセラーの訓練法

 

感性を育てる

カウンセラーにとって一番大切なものは「感性」です。心理学は確率論的世界を重視したサイエンスとした場合、カウンセリングは感性を大切にするアートの世界です。感性とは、人間の幸せの材料でもあります。感性が優れていれば、花を見て綺麗だと感じられますが、感性が低下していれば、花を見て何も感動しません。カウンセラーの感性が低下すれば、それだけ相談者の変化を捉えることが出来なくなっていきます。他者を援助していく場合に、この幸せの材料である感性を育てることが最も大切なことになります。

 

共感することと聴くこと

共感の意味は、自分は体験していないけど、あたかも相手と同じ気持ちになったように理解することであす。例えば、相談者も人間関係に悩んでいて、カウンセラー側も悩んでいるとする。だから、カウンセラーは相談者の気持ちに共感できるとはなりません。これは、ある意味で同じ境遇、同感です。共感とは、同感の「辛いね」ではなく、「辛いのでしょうね」となります。つまり、自分の経験ではなくとも、心から相手の内的感情の辛さに触れることを共感というのです。

 

信頼関係を作る

カウンセリングは「意図された会話」になります。一般的には、人間関係のない人と面談をして、目標とするところに進めていこうとするものなので、思いつきでできるはずがありません。しかし、世の中には会うだけで爽快感がある人、会って話をするだけで勇気付けられる人もいます。ある意味、カウンセリングとは、どのような技術や考え方をもてば、相談者にとってそのような人になれるのかを求めていくことでもあります。したがって、その意味でも、体系化した一つの働きかけを持つ必要があるのです。

 

観察すること

対象の言動を観察することで、対象に応じた接し方が可能になります。また、ちょっとした仕草で、身体的な具合も推察することが可能です。例えば、会話中にしきりに手を首に当てるようであれば、何かしら首に問題を持っているはずです。また、椅子の座り方(浅く座る)、ベットに横になる時や起きあがる時を見れば、腰痛があるかないかは判断できます。この他にも、姿勢が前かがみの場合は、疲れているか、気持ちが沈んでいる時です。身体の向きがカウンセラーの方を向いていない、身体は向いているが、足先が向いていない時は、会話に乗る気になっていない時です。足を絶え間なく動かし続ける、髪手で顔や髪を頻りに触る、服装、靴、アクセサリー、声のトーン、表情などでどのような心境か、あるいは、性格、生活環境を知ることは難しいことではありません。

 

カウンセラーとしての態度

カウンセラーは、何故か「先生」と呼ばれることがあるので、どうも態度が大きくなる人がいるようです。仮に、先生と呼ばれるにしても、それはカウンセラーの人格に対して呼ばれていないことだけは確かです。カウンセラーは、確かに一般の人にはない専門的な知識や技術は持っていますが、そのことと人格とは無関係であることを知る必要があります。さて、カウンセラーの態度としては、まず相談者に好意を持つ必要があります。それは、「あなたの役に立ちたい」という気持ちです。そして、カウンセラーは自分の人生を明るく、積極的に生きるということを自覚して身につけておかねばなりません。カウンセラーには悩みがないのではなく、悩みを持ちながら、それを横に置いて、あるいは棚にあげて他者の援助を行なえる他愛的な行動が出来る人であるといえます。また、自分の体調や感情に左右されず、常に安定した面談ができることも大切なことです。

 

結果よりプロセスを重視

カウンセラーにとって、相談者への大切な働きかけは、相談者の求める利益を強調した結果から、そこに至るプロセスへと目標をシフトすることです。余談ですが、現代においても、どの理論、学派、方法を用いても成功率はザックリ6割といわれています。いかにバランスセラピー学が効果的といえども10割の成功率は現実的に無理があります。つまり、どんなに手を尽くしても対象を失望させる可能性があるということです。その意味でもプロセスを懸命に生きること、援助することが大切です。その結果、目標に到達しなくとも、前進、進歩が得られ、結果主義にある挫折感の大きさも避けられます。

 

 

信頼関係を構築する技法(関わり技法) 

質問

対象に対する好意や関心の強さを伝えます。ここで注意したいことは、対象の問題についての質問に始終することではなく、対象の人となりに関心を持つことです。質問は問診とは違います。カウンセラーは、自分の話したいことではなく、対象の関心に関心を持つようにしてください。

反復

対象の会話の内容に対する理解度を伝えます。例えば、頷く、なるほど、そうですかと相づちをうつ。また、ある程度の対象の話を聴いてかた、その話を要約することも必要です。単純な反復は、そればかり繰り返していると、会話が単調になるので、ある程度の会話を要約することで、カウンセラーは、対象の話をキチンと理解していることを伝えることができます。

支持・承認

対象への信頼と共感です。面談を始めてスグに対象の問題点や修正すべき事柄を指摘すると、信頼関係を作ることができません。人間関係の問題で、「それはあなたに問題がある」と言えば、対象は、「そんなことは言われなくとも分かっている、どうしていいのか分からないのだ。そんなことも分からないのか」と考えてしまいます。初期段階では、行動を修正するという働きかけよりも、修正可能な心身を回復させることに視点を置きます。そのためには、相手の感情に共感して、「よく耐えていますね」「よく頑張ってこられましたね」などと状況に対しての評価を与えます。

動機づけ

あまりに高すぎる期待はいったん冷やすことが必要です。また、逆に適当な猜疑心は健康です。高すぎる動機は、対象に紹介者が存在する場合に多く見られます。劇的な改善がみられたケースを聞き、自分にも同じ結果が得られるという気持ちを抑えるのは、期待値を下げることであり、動機を低下させることになりますが、完全な肯定から入ると残っていることは否定していくことだけになります。そういう意味で対象の持っている不安やある程度の猜疑心から入ってもらう方が、相互理解が深まるのです。また、現状の改善と共に、それ以上に大切なのは、未来への展望を示し共有することが大切です。

カウンセリングの要素と展開

対象者の問題の本質について展開していくことです。対象の取り組むべき問題が何かを明確にしていきます。そうでなければ「様子を見ていきましょう」という程度のコメントで別れてしまいます。本題の本質に迫るためにはどうすればよいかを示していきます。

  1. 意味や感情の明確化

対象の言葉の中にある「意味」「感情」をカウンセラーが表現することで、対象の内面に働きかける(気づきを促す)方法です。日常会話で訓練することが必要です。後の項に例を取り上げていますので参考にしてください。

  1. 自己受容

自己受容とは、「自分のありようをそのまま受け入れること」と心理学系の辞書にあります。また、自己受容は自尊意識に置き換えられることもあります。しかし、この意味を実践的に理解するには、ある程度の訓練が必要です。なぜならば、大学で心理学を専攻して「自己受容」という言葉を知っても、単なる知的な理解に留まり、それを実践的に活用しなければ、これを生活で活用することができません。行動が伴わない知識は、ある意味で害になることもあります。自己受容を考えるうえでの問題は、自分と他者の位置関係です。自分側でもなく、他者側でもない、この両極から離れることが「ありのまま」の状態です。 受容の立ち位置に必要なことは、人間にある強い識別作用を知ることから理解しなければなりません。識別作用は、良い悪い、好き嫌い、成功失敗、健康病気、過去、現在、未来などを区別することです。この区別がもう一つの対象と対立を起こします。対立は一方を否定することになりますので、やがて怒りの感情になり、戦うか、逃げるかのストレス反応の主因となっているのです。自己受容は、「極端でなく、偏らず、ありのまま」であり、「ありのまま」とは、どちらつかず、宙ぶらりんといったなまぬるい態度ではなく、独自の自主的な行動のことです。自分が体験することへの消極的な回避ではなく、むしろ積極的な行動なのです。したがって、自己受容には、健康な心身が必要になります。つまり、自己受容の能力を高めることは、ストレス反応そのもののコントロールをすることになるのです。しかし、ここで気をつけなければならないことがあります。それは、こうした自己受容の態度は、その人の日常の生活に対する満足度と関係していることです。日常の生活への満足度が高ければ、周りへの脅威を感じることなく生活できるわけです。つまり、生活の質が高ければ、それだけ自己を受け入れやすい環境になります。こういった環境要因から得られた「自己受容もどき」「みせかけの自己受容」には自律性がありません。自己受容は個人要因に起因する、自ら調整する作用を持ったものでなくてはならないのです。そこで、ストレスケアにおける自己受容の定義を改めて示しておきます。

 

「自分自身に起きる一切の体験に無駄なことはない。その体験には、自分自身の人生を成長させる意味や価値が含まれている。」 

人間本来の識別作用から離れること。自分の体験することに「良いも悪いもない」自分の存在を唯一の存在とすれば、またその体験も唯一無二であります。自分自身と分離することはできない、自分自身は体験であり、体験は即ち自分自身である。この「自即他」を知ることが、自己受容を知ることになります。

 

3.ワーク(自宅や職場での課題)として取り組む

対象が「自ら行動して変容すること」を援助することが大切です。セルフケアへの関心が薄く、HS体験から始める人は、身体的問題や心理社会的問題をできれば受動的に解決したいと考えていることが多く、HSを実施しながら「今のその人にできることを提案」することが重要になります。なぜなら、人は自ら行動する人しか変化できないからです。対象に「負担をかけない」行動を選択提案して試行、その結果について支持共感していきます。そうすることによって、相談者が「できた」「変われた」という自覚が育ち、セルフケアへの意欲や関心が高まっていくのです。

抵抗期

 いわゆる中だるみです。当初の対象が考えていた期待感が薄れ、これ以上継続しても今以上の改善は無理ではないかと考え始めます。また、最初の新鮮味が薄れてきます。その場合、対象の態度に次のような変化が見られます。

  1. これまでと違い無口になる
  2. 会話の内容と態度に違和感がある
  3. 遅刻やキャンセルが起きる

 

このようなことが見られた場合、放置すると中断になります。また、放置せずとも、けっして対象を問いつめたりせず、責めるような口調で話してはいけません。カウンセラーは、対象に対して正直に「これ以上続けても改善しないと考えているのですか」と聞いてください。その結果、対象の本心に触ることができます。そして、20回の面接に遠い面談数の場合は、再度、思考や生活習慣の改善への動機づけを行ない、目標向かってどうしていくかを話し合うことが大切です。

抵抗期に特に再確認したいことは、次の3つです。

  1. 何がどうなってほしいのか
  2. そのためにあなたに出来ることは何か
  3. あなたの考えはどうか

もちろん、この3つは初回面談時にカウンセラーが提示している課題ですが、再度、この基本的な質問をして、改めて再スタートするということになります。

 

中断と終結

中断の理由として、急な多忙性、発病、期待はずれ、引っ越し、転勤、家族問題、経済的問題など対象の環境の変化も考えられますが、カウンセラーの成長のために、関わり方や進捗に問題がなかったかなどを検討することが大切です。また、終結は、対象に見放され感がないように注意してください。「これで、ストレスケアはいったん終了です。でも、何かかればいつでもご相談ください」などと伝えます。終結は、不安や挫折の体験だけでなく、自分が変化し成長したことの喜びや、新しい出発への希望を体験することでもあります。つまり、カウンセリングの終結は、別れであると同時に、対象が自立した新しい生活の始まりでもあるのです。カウンセラーは、この別れの複雑な心境を対象と分かち合い、終結へと導いていきます。

 

カウンセラーからの中断

次のような点が考察される場合、ストレスケアは無効化すると考え、良導の実施をお断り、もしくは中断する場合があります。

  1. ホメオストレッチ(バランスセラピー)が「リラクセーション法」であり、「対処、対症法」、「即効」、「万能」ではないことを理解されない場合。
  2. 目標について「自己成長」への同意と了承が得られていない場合(積極的、能動的な行動要素の観察)。
  3. 未成年の場合(本人が同意していても、十分な家族の協力が得られない)
  4. 「無理なストレス」ではなく、他の症状・病態が優位に考察される場合。
  5. ストレスケアカウンセラーの適性のない役割期待が考察される場合。

(適性のない役割とは、預ける・任せるなどの親代わり、保護者代わりの機能や、対処、問題解決など本来の役割から逸脱した機能を指す)

  1. QOLの向上が考察されない場合、受動期から能動期へのステップアップのタイミングが長期間になる場合(相談者の自己成長動機が依存関係を継続するための「みせかけの動機」となる可能性がある)
  2. 暴力や中傷など、はげしい逸脱行動が見られる場合。
  3. 社会的良識が成立共有しにくい場合。

 

カウンセラーの限界について

1)カウンセラーの側の限界

①危機的臨床体験の不足からくる限界

②時間的制約からくる限界

③対応人数からくる限界

④論理的固執性からくる限界

⑤業務の多忙性からくる限界

 

(2)相談者の側の限界

① カウンセラーを必要とする認識の程度による限界

② 時間的、距離的限界

  1. カウンセラーとの相性の限界
  2. 神病理的限界縁・親族的限界

 

面談における応答

面談場面で相談者が質問する内容については、ある程度予測することが可能です。ここでは、質問された内容の前後の文章記述は含めずに、単純に相談者の質問内容を想定して、即応的例を紹介していきます。また、初回面談の対応え特に気をつけなければならないのは、次の2点です。

  1. 相談者のストレスについての理解度
  2. ストレスの考え方は十人十色なので、ストレスとは何かを伝えます(ストレッサーとストレスの説明)。
  3. 相談者自身でできることの提言
  4. 初回時には、相談者が問題解決に何らかの形で参加することが大切です。したがって、その方法は後日にしても、取組への同意を得ておきましょう。

 

中断

カウンセリング場面におきる中断は少なくありません。それは、カウンセリングの目標と相談者の現実の利益を欲する目標とのズレにも原因があります。カウンセリングの課題は、今すぐという即効性より、相談者の成長を伴うプロセスにあります。したがって、相談者の能動性、積極性を引き出すための動機づけがカウンセラーには求められるのです。

 

終結期

相談者の自覚やカウンセラーの所見、客観的な評価(AG)によりカウンセリングにも終わりがきます。ある意味で、カウンセラーの達成感が得られる時です。この時には、相談者に見放され感を持たさないように、いつでも何かあれば、相談に来て下さいと伝えます。

 

問題の頻度、影響、状態

対象の問題が何であれ、その問題により日常生活にどのように影響があるのか。問題自体の解決に対して、問題の「頻度」「状態」「影響」を取り扱うことが大切です。

頻度 一日、1週間、1ヵ月の間で起きる回数
状態 どの程度か(数値化)、何が、いつ、どこで、誰に対して、どのようになるのか
影響 そのことで、何が出来なくなっているのか