脳幹の働き
- 2012.04.29 | ストレスケア
私たちは、五感を通じて外界と触れあいますが、それは大脳新皮質が描き出した表層的な世界です。
生きるということは、その下に隠されている、本当の意味での自然という、ゆらぎの世界で生きることです。
私たちが視床下部、すなわち脳幹をとおして、世界と出会い、文字通り世界を体験するということは、世界は私たちが考えるものではなく、経験するものなのです。
人間は大脳新皮質による意識的な働きが装飾を様々に施していますが、生きるための根本的な動機は本能的な反応であり、その原型とも言える「闘争か逃走」というストレス反応は本能的な反応です。
私たちは、ストレス反応を論理的に知性で静めようとします。しかし、ストレス反応は人間の作為や意図をそうやすやすと受け入れてくれません。それより、脳幹の中にある、ひとつのゆらぎ、システムに任せて、その刺激を解消していくことが大切です。
リラクセーションは、ゆらぎの中枢である脳幹を再活性させて、ストレス反応を解放し、身体のシステムの自然な働きに任せることを促進させていきます。
※ ここでいうリラクセーションとは、特定の実習法により得られる独特な心身の状態をいいます。
自然なリズムを営んでいる「脳幹部」をどのように再活性化させればよいでしょうか。それには、生理学的なリラクセーション状態を作り出すことが有効です。
ストレスは脳の興奮や緊張状態(戦うか逃げるか)なので、その生理的反応を起こしている中枢部(脳幹部)へ直接アプローチする方法です。言葉のケアにはない効果が期待できます。
脳幹部へのアプローチとしては、末梢神経である筋肉を利用して行ないます。骨格筋は全身を覆っていますが、その中でも抗重力筋に対してアプローチすることが大切です。
ここでは詳しい説明を省略しますが、専門に訓練を受けたストレスケア・カウンセラーが実施します。
これは、自律訓練法やバイオフィードバックなどと異なり、短時間で特別な訓練を要さずに、リラクセーション状態を作り出すことができ、早期に心身の疲労を除くことも可能です。
もう頑張るだけでは、うまくいきません。病気は習慣の集まりです。積極的に自らを変化させていくことが求められます。詳しくは筆者、バランスセラピー学入門(2007)を参照してください。
「脳幹」は、リラクセーション状態では、呼吸数、心拍数の減少と血圧の低下、抹消皮膚温の上昇といった「幸せの生理」を生み出しますが、それは、現実をあるがままに受け入れるという「満足する心」につながっています。
大脳新皮質の暴走と、それによって生じている大脳辺縁系との葛藤を解消していくには、ストレスにより、緊張し、疲労してしまっている「脳幹」を再活性させて、ホメオスタシスを回復させていくことが大切なのです。
アリストテレスは、「一般に技術は、一方では自然がなしとげえないところの物事を完成させ、他方では自然のなすところを模倣する」としています。
リラクセーション状態を作り出す技術は自然の営みであり、自然の不完全な部分を完成させることになるのです。