バランスセラピー理論
- 2012.06.11 | ストレスケア
自然が人間に要求している生き方、つまり自然の法則にかなった生き方とは、絶え間なく変化する環境の中で、自分自身のバランスをとって安定性を保っている状態にほかなりません。
そして、私たちが安心して生きていくためには、自然界が有しているホメオスタシス、つまり「復元力」に対する信頼を必要とします。
バランスセラピー理論は、人間が自然性を回復していくことで、快活な生活、安心感、満足感、幸福感、愛、勇気、心身の健康、能力の発揮、イキイキと生きること、暖かい人間関係、思いやり、やさしさなど、私たちが本当に求めてやまないものを、自然に獲得していけるということを示しています。
現実の世界が、常に私たちが持っている理論より複雑であることから、個々の仮説モデルによる問題解決法を直接的に求めても、それが実現できずに、かえって緊張感を高め、自然性を損ない、問題解決を遅らせています。
自分自身と他者との無意識的な対立や依存をゆるめ、「自分」ということを取り戻すことを主眼に置くことではなく、そこから脱皮して、「自分」ということを一時棚上げして、他者や周囲の事物と融合(統合)していくことを通じて「一体感としての安らぎ」をどう実現するか、という展開が大切です。
対処的に問題解決を急ぐ人には、少し遠回りに感じられるかもしれませんが、バランスセラピー理論は、自己の自然性の回復について導き、人間が本来持っている能力、可能性を引き出していきます。
また、認知理論の基礎は「人の気分というものは、現実の物事や状況によるのではなく、その人の物事のとらえ方によって左右される」という事実から出発します。
エピクテートスというローマ時代の哲学者の次の言葉が、この事情をよく語っています。「人を悩ませるのは、事柄そのものではなくて、事柄に関する考えである。」
また、「心暗きときは すなわち遇うところ ことごとく禍なり 眼明らかなれば 途に触れて皆宝なり」と述べたのは空海です。
心が沈んでいるとすべてが良くないことになる。心に光明があれば、すべてのことが、かけがえのない幸福になるという意味です。
つまり、人の気分というものは、客観的な事情によるというよりは、むしろ多くの場合、自分の主観的な考えや感じ方によるのだ、ということです。
科学的な知見である認知行動理論は、考え方や受け止め方の偏りが問題行動を生み出すというモデルに基づく認知と、環境と個人要因の相互作用の中で問題行動が繰り返されるというモデルに基づく行動の両面を対象として展開しています。
しかし、両者はそれぞれ問題発生の原因が異なり、環境と個人要因との統合が困難になる傾向があります。
そのため、バランスセラピー理論では、認知の修正よりも優先して、人間の自然性を再活性させる生理学的なリラクセーション状態の行動への影響力に注目し、そこに自己成長モデルによって介入することで、環境要因と個人要因の統合を目指していきます。
私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けています。しかし、強いストレスを受けるなどの状況下ではその判断に不自然な状態が生じ、閉そく感や疎外感を伴う非適応的を示すようになってきます。
その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が引き起こされ、さらに考え方や受け止め方の歪みが強くなるという悪循環が生じることになります。
バランスセラピー理論は、無理なストレスや疲労によって、人間の気分や行動が認知のあり方(ものの考え方や受け取り方)の影響を受けることから、疲労やストレスの改善を行うとともに、認知の偏りを修正し、本来の自然な自己を回復させることを目的とした体系化された自己成長モデルです。