ストレスという言葉は、1930年代にカナダのハンス・セリエが提唱した「ストレス学説」の中心的概念です。


セリエは科学的な実験を繰り返した結果、生体に外から加えられた有害な作用に対して自分自身を防御する「自然の摂理」を発見し、ストレス学説を打ち立てました。



ストレス学の先駆者たち ストレス学説の先駆者として、フランスの19世に活躍したクロードベルナールとアメリカのウォルター・B・キャノンがあげられます。


ベルナールは、生体の特徴として、外部環境の変化に対して、一定に内部環境を整える働きを主張し、キャノンは、この生体の働きに「ホメオスタシスと名付けました。



しかし、彼らの提唱は生体の本質を捉えてはいたものの、具体的な説明がありませんでした。セリエは、このホメオスタシスの概念を実験で実証して科学的な革新をもたらしました人です。


ストレス学説に不可欠なホルモン学を中心に セリエのストレス学説は説明されています。つまり、ストレスは心の問題ではなく、体の中に起きたある状態を意味する言葉で、ホルモンや自律神経、免疫、筋肉のそれぞれのシステムにアンバランスが発生している状態です。

セリエのストレス学説は、生体の内分泌現象を中心に展開されています。内分泌とは、体内の細胞が科学物質を血液中に放出することで、いろいろな器官の活動をコントロールする役割を持ちます。


この科学物質をホルモンといいます。特に、セリエのストレス学説で重要な器官は、副腎皮質と副腎髄質です。


有害なストレス反応はどのような経過で進むのでしょうか。まず、ストレスを受けると生体は3つの反応を引き起こします。



1・副腎皮質の肥大

2・リンパ組織の委縮(胸腺など)

3・胃腸の内壁の出血、腫瘍

これらをセリエは非特異的反応と呼びました。


セリエは研究の中でラットをいろいろな方法(例えば異物を体内に注入、水攻め、過労)でいじめています。


その結果、体内の組織にはいつも同じ変化(非特異的)が現れることを発見したのです。非特異的とは、原因が異なっても同じように現れる症状のことで、これを不定愁訴という場合もあります。


このような現象を引き起こす理由は、物理的ストレス(主に外傷やウィルス、病原菌)によって脳下垂体→副腎皮質刺激ホルモン→副腎皮質→コルチコイド→細胞の内分泌系の経路と主に精神的な悩みや不安、葛藤などが原因で、自律神経系に影響を与えて自律神経→副腎髄質→アドレナリン→細胞の自律神経系の経路により引き起こされていきます(自律神経系はセリエ以降の研究になります)。



このように、生体は物理的、精神的ストレスに耐えて跳ね返そうとするのです。この時期を防衛期(抵抗期)と呼びます。

しかし、この抵抗は長くは続かず、やがて疲弊期に入ります。また、防衛期は向き合っているものには適応しようとしていますが、それ以外の適応力は減退していき、結果的に適応の範囲が狭くなるのです。



無理なストレスは、それを跳ね返そうとして生体の抵抗力を引き出しますが、これは見せかけの適応で、加え続けられるストレスに懸命に耐えている状態なのです。その結果とて生体の消耗が激しくなり、極度に疲労していくことになります。



動物のストレスは外敵から逃れれば短時間で決着がつくのですが、人間社会のストレスは、そう簡単にはいかず、深刻極まりない問題です。


特に現代社会の中で大きなリスクを持っているのは、自律神経系への影響です。ストレス=嫌のこと、満足できないことなどの心理的問題と考えられていますが、これは、ストレスではなく、ストレッサーということになります。


ストレスは「歪み(身体内部のアンバランス)」。ストレッサーは、ストレスを発生させた圧力や刺激、原因側となります。



多くの人は、このストレッサーとストレスを区別しないで使っているために、嫌なこと(心理社会的問題)=ストレスと解釈しているのです。したがって、ストレス解消法が「気分転換」になるのも分かるような気がします。



ストレス解消のベスト3

1・おしゃべり

2・買い物

3・旅行



しかし、ここにストレス対策を行う上での問題が浮かび上がります。これらは、ストレス解消というより、嫌なことを回避、黙認するという方向です。


「ストレス=悪いもの」と合理的に考えてしまうと、どうしてもその人の人生が刹那的、衝動的、消極的な生き方になってしまいます。


あるいは、満足できない、不快だからといって、相手や対象に対して怒る、否定する態度では、知性のない動物的反応と同じで、人間として成長が出来なくなります。

ストレスの原因であるストレッサーへの対応は2種類あります。



1・戦うか、逃げるか(動物的、本能的な手段)

2・受容するか(体験に意味や価値を見出していく)



普段、あなたはどちらを選んでいますか?



もちろん、2の「受容」という選択が望ましいのですが、「受容」の意味を「上手なあきらめと」誤解している場合もありますので、このことは後ほど書いていきます。



大切なことは、ストレッサーへの対応法は、その人の「生き方」と関係があることです。