ストレス社会とは過剰適応社会のことです。適応のための、無理な状態が続き、緊張が強く、外からは何も問題がないように見えることが深刻な問題です。




ストレスは積極的に生きようとする代償でもありますが、多くの場合、無理なストレス状態は、私たちにとって無自覚なものとなっていることが最大の問題です。くだいて言えば、無理なストレスを抱えながらも生きられることです。




精神医学の分野では、元気のよいことや、明るいことは健康の指標ではありません。感情の両極をうまく移行できること、それが健康のしるしと見なされます。



 大切なのは、自信喪失や絶望、悲観、あきらめなどのマイナス思考に陥らないことではないのです。さまざまな感情の間で、上手に揺らぎながら生きていけることです。



「プラス思考」とか「ポジティブ・シンキング」ということが今も盛んにいわれます。どんなに都合の悪い状況でも、あきらめたり、落ち込んだりせずに、すべてを前向きに考えようというのが、いわゆる「プラス思考」です。



しかし、人生には前進もあれば、後退を余儀なくされることもあります。ものごとのプラス面だけを評価し、そこにばかり価値を求めていたら、必ずやってくる人生のマイナス面を上手に受け止められなくなるのではないかと心配になります。



プラス思考があれば、その前には、必ず、マイナス思考があったわけです。長い間、落ち込んでいた人は、しばらくすると、だんだん頑張ろうと思いますし、長い間、頑張ってきた人は、徐々にくたびれて、頑張れなくなります。



この、人間としての、自然なゆらぎや、リズムを大切にして、本当の意味で、自分とどう付き合っていけばいいのかを考えていく必要があります。プラス思考だけを強調するのは極端な考え方です。


今日のプラス思考ブームを見ると、むしろ、その背後に、人生のマイナス面に対する強い恐怖感が隠されている気がしてなりません。


自信を喪失したり未来を悲観したりするマイナス思考になってはいけないという、強迫観念のようなものと言ったらいいでしょうか。しかし、避けようとすればするほど、そのものに逆に憑依されていくのが私たちの心です。