1990年代になると、家族を求めても得られない状況が出現してきている。その背景には、少子高齢化や核家族の終末的現象ともいえるものがある。要するに戦後の家族モデルの崩壊である。


 今の家族問題は、戦後家族モデル、つまり、「夫は仕事、妻は家事で子育てを行い、豊かな生活」を目指しても、通常の努力では実現できす、それから逸脱して破たんする家族が増加していることである(山田2007)。



つまり、戦後家族モデル維持が困難になってきていると考えなければならない。日常的な生活における持続的成長だけでなく、結婚して新しい家庭を作り、もしくは親の家業を引き継ぐ時にも成長モデルが疲弊している。


男性なら、父親以上に豊かになるような職業に就くことによって、父親が自分の歳だった頃よりも豊かな生活を手に入れること、そして、女性なら父親以上に収入のある男性と結婚することによって、母親以上の生活水準を確保するこが求められてきた。


高度成長期であれば、学歴の世代間上昇も多く、子どもが父親より収入が多い職に就けることができた。自営業で親の仕事を引き継いでも、農産物の生産者価格上昇や事業拡大によって、親以上の収入を得ることは容易であった。それは、社会全体が成長していたからだ。



しかし、1975年以降の低成長時代には、学歴上昇の頭打ちによって、親から子どもへの階層上昇がうまくいかなくケースが増加する。


一方、豊かさの象徴である「住宅」「家電製品」「車」「子どもの学歴」に掛るお金は、上昇傾向にある。特に住宅は、収入比率において高価なものになり、バブル期には最高値に達した。豊かさをめざすことが戦後家族のアイデンティティである限り、家族は、これらの豊かさの象徴を追究し、手に入れることが目的となる。


結果的に、家族生活の経済的負担は増加するばかりである。


女性の就労率が増加したのも戦後モデルの実現可能性が低下したために、家族行動が変化して、モデルの実現率を高めるための反応であると考える必要がある。